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技術資料・研究開発

高機能繊維を使用し暑熱対策を施したチェーンソー防護服の開発

H19年度 林野庁林業労働災害防止フロンティア補助事業

研究目的

 我が国の夏期は温暖化傾向のため30℃を越す真夏日が続いている。林業では高齢化が進行し高温による熱中症が増加、死亡事故も懸念される状況である。炎天下チェーンソー時の防護服の軽量化を図り通気性や吸水性を改善して暑熱対策を施し、熱中症を予防し安全で快適チェーンソー防護服の開発を行う。

研究方法

  1. 前述の目的にあった通気性、吸水性(吸汗性)、吸湿性、清涼感等の条件にあった織物が市販されていないので開発する。
  2. 軽量(生地目付)、布地強度等は従来品(作業服地)と同等以上
  3. 評価試験は、公的試験場(石川県工業試験場 生活部 愛媛県繊維産業試験場)にて行う。
  4. 人間工学的デザインは神戸芸術工科大学 ファッションデザイン学部にて行う。
  5. 衣服快適性評価は石川県工業試験場にて行う。

研究課題

表素材

  1. 表素材の重量は従来品の30%の軽量化をはかり強度は同等とする。
  2. 通気性を確保するために3軸の立体織物として通気性を最大にする設計。
  3. 毛細管現象により肌側の水分を衣服外へ排出(速乾性)気化熱で体温を下げる設計。
  4. 防護パットの能力を向上、パラ型アラミドF配合強度アップを図り軽量化。
  5. 裏地に吸汗素材を採用して衣服内部の快適性を向上。

裏素材

  1. 上記素材を使用して人間工学的設計を行い作業性を改善する。
  2. 視認性の向上、遠方よりの作業者の確認が出来る。
  3. 衣服内機構の改善、通気、排気等の工夫(ベンチレーション)
  4. 時代にあったデザイン(後継者対策として)

開発・改良により製作する試作品の概念図

織物概念図

織物構成の概念

表素材

  1. 経糸 吸汗性繊維
  2. 緯糸 通気性繊維
  3. 吸汗繊維で汗を衣服外に排出
    ※毛細管現象により内部より外部への水分移動
  4. 気化熱で皮膚温度を下げる
  5. 合せて速乾性で肌表面が乾燥させて快適性の向上させる

新素材写真

織物生地(表地)と物性評価

工業試験場で測定した物性値

  1. 目付(単位面積当りの生地重量)と厚さ
  2. 接触冷温感(Qmax:精密迅速熱物性測定装置により測定)
  3. 通気性(通気度試験機により測定)
  4. 吸水性(吸水試験機により測定)
  5. 熱・水蒸気透過性(衣服内外環境測定装置により測定)

精密迅速熱物性測定装置(サーラモーボ)

接触冷温感(Qmax)の測定

 試料との温度差10℃に相当する熱をT-BOX部に蓄積し、これを試料表面に接触させた直後、熱流が試料側に移動する時のピーク値をQmax(W/cm²)と定義する。つまり、人間の指先が物体に接触する時に感じる冷温感を再現する事ができる。一般にQmaxが大きいほど、肌に接触した瞬間の冷感が高いことを示す。

通気性・吸水性試験機

通気度試験機(フラジール式)

JIS L1096 8.27.1法

繊維試料の裏から強制的に空気を吸引した時の通気量(cc/cm²/sec)を測定

吸水性試験機(バイレック式)

JIS L1907 7.1.2法

垂直に垂らした繊維試料(幅25mm)の下端を水に10分間浸した時に、布が水を吸いあげた高さ(mm)を測定

衣服内外環境測定システム

透過熱量・透過水蒸気量の測定

  • 一定温度(36℃)の水から発生する熱と水蒸気が、織物試料を透過する速度を測定
  • 透過熱量(W/cm²/h)
  • 透過水蒸気量(g/cm²/h)

生地の特性

衣服内温湿度計測システム

環境試験室

生活環境試験室(温度:-20~50℃、湿度:30~95%RH)

着用試験時の装着・使用品

試験条件

温湿度センサー取付位置

胸・背中・右大腿部裏の計3ヶ所

  • 環境
    温度32℃、湿度60%RH(夏場の森林作業時を想定)
  • 送風
    左前方から扇風機により微風を当てる(風速:1.5m/秒)
  • 動作
    装備品一式を装着した状態でステッパーを漕ぐ(120回/分)
    {運動(3分)→休息(3分)}× 3回繰り返し
    消費カロリー:25cal×3回=75cal
  • 被験者
    2名(A:40代後半、B:30代後半)
  • 測定項目
    衣服内気候(衣服内側の温度・湿度)の測定(衣服内温湿度計測システム使用)

衣服内の表面温度分布測定

運動(3分)終了直後に上着を開き、衣服内側の体温分布をサーモグラフで撮影
胸中央部(1ヶ所)の温度も測定

着用試験の流れ

試験Ⅰ 複数の被験者(A・B)について、無風状態における従来品と試作品との相対比較を行う。
試験Ⅱ 一人の被験者(B)について、有風状態での試験を実施し、従来品と試作品における、風の有無による影響を比較する。
総括 従来品と比較した試作品の特長について考察する。

衣服内表面温度

被験者A 無風 従来品・試作品

被験者B 無風 従来品・試作品

被験者B 有風 従来品・試作品

被験者B 試作品 有風・無風

総括(石川県工業試験場)

試作品の特長(従来品との比較)

  1. 織物生地について、軽さ・通気性・吸水性は顕著に向上し、熱・水蒸気透過性は僅かに増加が認められる。
  2. 製品について、着用時の衣服内の温度・湿度・表面温度(体温)はいずれも低めであり、有風状態においては、その差が増大する傾向が見られる。

着用モニター調査 平成20年2月

場所 愛媛県
(株)いぶき
茨城県
森林総研
兵庫県
森林組合
連合会
愛媛県
森林組合
連合会
属性 男性 男性 男性 男性
年齢 30代 40代 30代 30代